朝、目を覚ましたら、隣りでまだ京一は眠っていた。


仰向けになって、やけに寝相がよくて、顔はちょっと怖いまま。
寝てても起きてても、その辺は変わらないわね。
上半身だけ少し起こしながらそんな京一を見て、思わず、呆れたような可笑しいような、どっちともつかないため息をつく。


「―――京一?」


耳元で小さく名前を呼んでも、規則的な寝息は変わらない。
私はちょっとした悪戯心もあって、京一の胸の上に頭を乗せた。


心臓の音が聞こえて。温かくて。
気持ちいい。


私は目を瞑る。
昔は腕枕とか、あまり好きじゃなかった。
だって、寝心地悪いし。


でも、こうやって京一と寄り添って寝るのは好き。
何でだろう?・・・胸板厚いから?
そんなくだらないことをぼんやりと考えながら、じーっと、京一の心臓に耳を押し当てる。
―――あれ?
暫くして、その鼓動が少し速くなってきた気がした。


「―――何してるんだ。」


そして程なく、頭の上から京一の声。
するり、と、その京一の手が私の髪から背中へと流れた。


「あ、起きちゃった?」
「重たくて寝られねぇ。」


失礼な。
顰めた顔を片手で覆い、そっぽを向く京一。
でも私の肩に触れている手は温かいまま。


「京一って胸の筋肉動かせそう。」
「・・・わけの分からねぇこと言ってるな。」


その肩にあった手が私を胸からべりっと引き剥がし、もう片方の手で私をぐるり、と包み込む。
私はその温かさに再び目を閉じ、京一の首に鼻先を摺り寄せた。


京一の呼吸をする音が聞こえる。
この音も、好き。


私も京一の背中に手を回す。
そうしてじっとしてると、京一が笑いを含んだ息をふと吹き出した。


「お前、だんだん心臓の音が速くなってるぞ。」
「・・・う。」


少し離れて京一を見れば、可笑しそうに口元を緩ませている。
おかしい。
京一の音。落ち着くはずなのに、何かドキドキしてきてしまった。
―――でも、そう言う京一だって、少し速いくせに。
私が小さく睨むと、京一はまたちょっと笑う。


「もうちょっと寝かせてくれ。」


そう言って、また私を抱きしめる。
そんなこと言って。京一、本当に寝られるの?
私は心の中で呟きながら、一緒に目を閉じる。


この心臓の音が落ち着くのが先か。
この心臓の音に負けるのが先か。


そんなことを考える。いつもの、休日の朝。