でんせん




布団に入るタイミングは、二人一緒のときと渉が先に入っているときと―――大体2対1くらい。
私がカップとか洗っているうちに、さっさと渉は先に寝てしまう。


ほら、今日も眠そうに大きく欠伸して、私の入るスペースにしっかり背を向けて。
付き合い始めのときめきなんて、あったもんじゃない。
電気を消して、もそもそと渉の隣りに入りこむ。


「―――ちょっと渉。体を横向きにされると隙間が出来て寒いって言ってるでしょ。」
「ならお前も横向けばいいだろ。」


欠伸を我慢もせずに、そうヌかす渉。
・・・むかつく。


「―――って、何もお前まで俺に背を向けることないだろ。」
「そんなの勝手じゃない。」
「可愛くねー。」


渉に言われたくないわよ、渉に!
私はぐるりと体の向きを変え、渉の鼻をギュギュッとつまんだ。


「いて!子供みたいなことするな。」
「何よ、子供みたいなことって。それじゃあ・・・」
「お前は変態か。」


渉もぐるりと体の向きを変え、私の頭をパコ、と殴った。
二人で向かい合って、暗闇で目が合って、何となく照れくさくて。
私はぎゅ、と渉の胸に顔を押し当てる。
渉は私の背中に手を回して、ぎゅ、と抱きしめる。
お互い背中の後ろに布団との隙間が出来て、ちょっと寒い。
でも、前はすごく温かいから―――まあ、いいか。
暫くすると、どきどき、どきどき、二人の心臓の音が重なって、どんどん大きくなってくる。


「あー・・・。」
「え?」
「したいかも。」
「・・・もうちょっとマトモな誘い方はないの?」


何か最近、この台詞が多くなった気がするんだけど。
白い歯を見せて苦笑いする渉。
そんな笑顔に騙されないんだから。


「いいよ、私もしたかったから。」
「・・・・・・。」


何よ?渉の性格が伝染っただけよ?
私も渉の背中に手を回して、白い歯を見せてにやりと笑った。