untruth 6




「―――俺は、お前の方がお似合いだと思ったんだけどな」

学食で、昼食を終えた幸村が頬杖を突きながら、窓際の席を見る。
その視線の先では、同じようにお昼を食べ終えたと切原が、テーブルの上にお菓子を広げて何やら話している。
楽しそうに身を乗り出すようにして話をする切原に対し、の方はまったりとした雰囲気でチョコレートを口に運びながらその話を聞く。
昼休みに限らず、大体二人の間の空気はいつもこんな感じだ。

幸村の向かいに座っていた真田も、チラリと二人の方を見、何も言わず茶をすする。
その眉間には随分と深い皺が刻まれていた。

「この前から思っていたが、お前がこう言う話に自ら関わってくるなんて意外だな、精市」
「俺も関わるつもりはなかったんだけど―――お前を見ていると、つい、苛々しちゃってさ」

いつものように温和な微笑を浮かべながら、吐く台詞はきつい。
しかしそんな幸村には慣れているので、柳は小さくため息をつくだけ。

「赤也には、みたいに一歩下がったところから見ることのできる彼女が合ってるかもしれない」
「ふふ……強がり?」
「冷静に判断した結果だ」
「ふうん」

つまらなそうな顔をして、また、たちの方を見る。
そして、ちょっとだけ微笑う。

「でも、まあ、あと半年もしたら俺たちは高校に上がっちゃうんだけどね」
「……幸村?」
「ん、さんって、可愛いんだよね。ちょっと何か言うとすぐに動揺するんだ」
「……精市、何を考えている?」
「別に」

と切原のもとに丸井が現れ、そのテーブルの上にあったチョコレートをひょいひょいと摘まんで口に放り込む。
その早業にただ驚くと、慌てて止めに入る切原。
いいじゃねぇか、これくらい。
丸井の唇の動きから、そんな台詞が読み取れる。
しょうがないなぁ。
幸村は三人の様子をクスクスと笑って眺めながら、立ちあがる。

「ちょっと、僕も貰って来ようかな」
「―――おい、幸村」
「大丈夫だよ、真田」

俺は、赤也も好きだからね。
真田の肩を軽く叩き、そう言って切原たちのもとへ。
幸村の登場にあからさまにビビる切原と丸井の姿を見て、柳も真田もやれやれと深いため息。
椅子から立ち上がり、真田は食器の載ったトレーを持つ。

「―――俺は、お前が納得していれば、それでいい」

俯いたまま、呟くように言って去って行く真田。

「納得、か」

続いて柳も席を立つ。

「―――どうかな」

トレーを持ち、もう一度窓際の席に視線を向けて、呟いた。